(9ページ) 「「こんにちは」が届くように」 福祉施設に通うようになって痛感するのは、福祉施設の存在と地域やそこにいる人との間にある距離間です。 例えば、福祉施設の利用者さんと一緒に散歩に行った時、すれ違った人に彼が挨拶をした時に返事はありませんでした。そこにはこの社会の配慮もあるのかもしれないけれど、「こんにちは」という挨拶に返事がないという寂しさに対しての理由にはなりません。僕が出会えた利用者さんたちと一緒に、どうやったら社会と見つめ合えるのかを思いました。そこで、この「バンド工房」は始まりました。まるでライブ演奏をするバンドのように、表現を通じてコミュニケーションをしていくというものです。 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 永岡大輔(アーティスト) TURNフェス6:東京都美術館《バンド工房》ステイトメントより 2021年8月17日 (10ページ) 「パラレルワールド」 ろう者と聴者が生きている世界には、それぞれの集団の中に不文律があると思っています。またそれと同時に、人は個々の「ゆらぎ」を備えている。「ゆらぎ」とは規則性と不規則性の間に存在するもので、同じ時間を過ごしていても、それぞれの時間の感じ方が違うパラレルワールドなのかもしれません。 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 瀬戸口ゆうこ(手話通訳士) 『TURN JOURNAL WINTER 2020−イシュー06』より 2021年2月5日 (11ページ) 「どきどきワクワク」 (TURNは)見たことのないものとか、やったことのないものを経験して、その人のもっている力を引き出してくれる存在。職員にとっても、他の業種や全く違う分野の人とやりとりするっていうのは、きっとTURNがなかったらなかなか経験できないかなって思ったので、職員にとっても大きな経験になったと思いますし、人と人とのふれあいを間近に見られる機会、どきどきワクワクをもらえる機会でした。 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 高田のりこ(板橋区立小茂根福祉園職員) 田村ひろし(らくだスタジオ)によるインタビューより 2021 年6月25日 (12ページ) 「相手の表情が読みづらい」 実は弱視の人も、相手の表情が読みづらいっていう状況に置かれてるんですよね。例えば、「そうだね」とかいうすごく短い言葉だと、それが笑って言っているのか、怒って言ってるのか、嫌がってるのかっていう、その表情がつかみにくくて、最終的には、「この人空気が読めないな」というような、人物評価を受けてしまうような話って結構耳にします。 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 三科聡子(宮城教育大学教育学部准教授) 第8回TURNラボ研究会より 2021年2月15日 (13ページ) 「アーティストとしてではなく」 (ももさんふれあいの家に行く時)僕は全然、アーティストっていう立場では考えていないですね。いくつかの様態があると思うんですよ、人間ってね。そのいくつかの様態の中の一つとして、僕はアーティストということになっていますけれど、その側面で施設の人たちとコミュニケーションを取ろうとすると、僕は上手くお話ができなかった。なのでアーティストではない私として聞いてみたいこととか、話してみたいことがどんどん出てきて、きっかけを見つけては利用者に話を聞くという形で時間を過ごしていました。 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 伊勢克也(アーティスト/女子美術大学短期大学部教授) TURNフェス6:オンラインプログラム 「MY TURN / YOUR TURN 02」より 2021年8月18日 (14ページ) 「そうやなと思っとく」 おはようございます、上田かなよです。帯を締めすぎて調子が悪いと思っていたけど、そうではなくて「こんなもの」が一緒にいると思ってる。 さっき小林君が「自分の小ささみたいなものをほぐしていきたい」といったけど、自分の痛みとか、なんかネガティブなことをどうこうするんじゃなくて、そのまま「そうやなと思っとく」という感じです。今日は「そうやねんけど、そうやな」と思って過ごします。 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 上田かなよ(詩人/NPO法人こえとことばとこころの部屋cocoroom代表/ 堺アーツカウンシル プログラムディレクター) TURN LAND ハーモニー 「お金をとらない喫茶展3 〜in my brain〜」より 2021年2月27日 (15ページ) 「肉声を確かめてから物事に臨みたい」 人は容易には変わらない。スマートに、フレキシブルに、てきぱき対応できることを良しとする世情にもつらいものがある。変化への順応性も一つの能力だが、愚鈍と言われても、ぐずぐずしていても、自他ともに潜在的にそこにあって、湧き上がってくる肉声を確かめてから物事に臨みたい。 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 永峰美佳(編集者/ライター) 『TURN JOURNAL SPRING 2021−イシュー 07』より 2021年3月19日 (16ページ) 「社会とつながる手段」 一年目のTURNフェスで、本当に感動しました。自分たちが染めた藍染めの糸が、自分たちの予想していなかったものに変わっていく。普段の施設だと利用者の皆さんが商品をつくって、社会に出して売ったり、手に取ってもらったりっていうところでつながっていくんだけれど、それ以外にも社会とつながる手段って実はたくさんあるんだっていうのを感じさせていただいたTURNだったなと、振り返るとすごく思います。 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 高野賢二(クラフト工房 La Mano 施設長) TURNフェス6:東京都美術館  トーク「手とその人 〜自分と社会を手でつなぐ32人のかたち〜」より 2021年8月17日