(33ページ) 「遠くの地面」 なぜ私たちは地面にくっついているんだろう。片足ずつしか離せないし、ジャンプしたってすぐにくっついてしまう。 私たちはそんな「近くの地面」を歩く。でも近すぎて無視することだってよくあるし、どこかへ向かうことで頭がいっぱいになって地面なんてよく見ていないかもしれない。 では「遠くの地面」だったらどうだろう、地面しかみえなくて周りのことは何もわからない「遠くの地面」を目にしたら、私たちはどんなふうにそこに立とうとして、どんなふうに歩こうとするんだろう。まずは遠くにいる人々から「遠くの地面」をもらうことにした。 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 岩田とも子(アーティスト) TURNフェス6:東京都美術館 《遠くの地面を歩く》ステイトメントより 2021年8月17日 (34ページ) 「成功することも失敗することもある」 TURNは実験的な場。成功することも失敗することもある。でも失敗って駄目なことではなくて、やってみた結果は一つの情報になるわけだから、なぜ失敗したか、そこを改善するにはどうしたらよいか考えることにつながると思う。失敗って、とてもとても大事な情報だと思う。過去の難しかったことを取り上げることは、私たちの財産だと思うんです。 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 瀬戸口ゆうこ(手話通訳士) 第14 回TURNミーティングより 2021年8月17日 (35ページ) 「ゴムのような物差し」 同じでいたいという気持ちと、違っていたいという気持ちを行ったり来たりしている。ゴムのような物差しを使っている気がするんだよね。 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 日比野克彦(TURN監修者) 第14回TURNミーティングより 2021年8月17日 (36ページ) 「水脈に浸かる」 日本語と手話の場合は、どうしても一対一の対応にならない言葉がたくさんあるので、そういった時に、文脈を拾うとか編集していくって作業よりは、水脈に浸かるというか、水脈を受け取れた時にその水の流れや動きに乗っかった身体から表現が出てくるような気がするよね。 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 和田夏実(インタープリター) TURNフェス6:オンラインプログラム「TURN Tunes vol.4」より 2021年8月29日 (37ページ) 「自分で絵を描き込んでいく」 プレーをする時には、ピッチを一つのキャンバスと例えて、そこに自分で絵を描き込んでいく。そこに描き込む絵っていうのは、フィールドの状況だったりとか、ボールの動きだったりとか、そういうものを描き込んでいって、自分の中で想像をしています。そういった部分でも、このブラインドサッカーとアートっていうのは、つながるのかなと思っています。 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 鳥居健人(ブラインドサッカーチーム「free bird mejirodai」/ 参天製薬株式会社企画本部CSR室所属) 第13回TURNミーティングより 2021年3月6日 (38ページ) 「誰もが自分で理解を補っていく」 通常の「情報保障」って、誰かが100%共有している情報を、どうやって障害をもった人に100%きちんと伝えるかみたいなところを目指しているんだと思うんですけど、多分、別にみんながみんなちゃんとわかっていなくてもよいという前提にすれば、コミュニケーションというのは、誰かが何かしらの形で情報を受け取っているんだけれども、誰も100%理解していなくて、誰もが自分で理解を補っていくことになる。それが主体的な理解とか解釈と言ってもいいと思うんですけど、そういう余地をわざと残しているようなところであれば、むしろよくわかんないところがあること自体が面白くなるんじゃないかな、と思いました。 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 梶谷真司(東京大学大学院総合文化研究科教授) 第9回TURNラボ研究会より 2021年3月22日 (39ページ) 「医療チームが社会に貢献しているのと同じレベルで」 フェスとか交流とかっていう場所じゃなくて、もっともっと身近に手軽に誰もが始められるし、誰もがTURNなんて言葉は知らないけど、それらしきことをして、穏やかな、かつ経済至上主義的な豊かさではない豊かさを獲得していくプロセス。それを求めている人には提供できている状態を用意すること。それが、医療チームが医療チームとして社会に貢献しているのと同じレベルにおいて、文化事業に従事している我々のタスクとして捉えるべきじゃないか。 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 森 司(TURNプロジェクトデ ィ レクター) 田村ひろし(らくだスタジオ)によるインタビューより 2021年6月4日 (40ページ) 「共感できないながらに想像する」 他者と関わったり、支援やケアを行ったりする時に、共感に頼ってばかりでは駄目なんじゃないか。共感の必要性ってすごく語られると思うんですけれど。共感できない人こそが、共感されない人こそが孤立化する事情に気づいていく。共感できないながらに想像することは可能なのかっていうことを議論したりもしたんです。 - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - 渡辺篤(現代美術家) TURNフェス6:オンラインプログラム「対談:渡辺篤×斎藤たまき」より 2021年8月10日