活動日誌

第2回サポーター勉強会「想像力を携えて他者と出会う」開催レポート

2020.9.28

TURN運営スタッフ

今年は「TURNサポーター勉強会」として、TURNサポーターを対象に、コロナ禍の状況を踏まえながら、プロジェクトをサポートする際の知識と技術、より包括的なアクセシビリティ等を学ぶ場を開き、様々な講師から得た知見を今後のTURNの活動に活かしていくことを目指しています。
9月12日(土)に開催した第2回サポーター勉強会では、「想像力を携えて他者と出会う」をテーマに振付家でダンサーの砂連尾理(じゃれお おさむ)さんを講師にお迎えし、多様な人とのTURNらしい向き合い方について考えました。

講師の砂連尾理さん

■ 異なる身体に出会うことで生まれる新しい感覚

前半は、身体やパフォーマンスを通して障害や病と出会い、異なる背景を持つ人とダンスや身体表現を通じた関係を育んできた砂連尾理さんに、これまでの活動をご紹介いただきました。

大学時代に「自分の身体のリアリティの無さ」からダンスを始めたという砂連尾さん。お話の中で特に印象的だったのは、40代のころに初めて障害のある方とダンスをした時の感覚が、バレエダンサーとダンスをした時と同じような感覚だったというエピソードです。
「バレエダンサーは非常に足をあげることができて、くるくる回っている。でも義足の人は僕にできないようなゆっくりした歩き方ができて。車いすの人はバレエとは違う回り方ができて。そういう風に思ったときに、方向性が異なるというだけで、僕とは『異なる』という意味においては一緒だったんですね。
むしろ義足の人と一緒に歩いた時に、本当にゆっくりと歩けて、そのゆっくり歩いた時に見えた雲や風で揺れる木を見た時に、『あれ、俺こういう世界があることを忘れてた!』と思ったんですよ」

障害のある方と触れ合ったり、一緒に動いていくうちに、時間や空間の感覚さえも変わったといいます。自分の身体の感覚を変えていくことで砂連尾さんの世界の感じ方も変わっていったそうです。

「どうしてもこの世界は、言葉や意味を中心にコミュニケーションが展開されますよね。だからそういうことがうまくできない人が、『障害者』って言われたりします。でも意味だけの世界ではない。もしかしたら身体というエリアに、何か新しいコミュニケーションの可能性があるんじゃないかなと思っています」

身体を中心とした新しいコミュニケーションの可能性を、砂連尾さんよりお話しいただきました。

■ 身体表現を通じてどうつながっていくか

ワークショップの様子。カメラに向かって手をかざし、砂連尾さんの動きに合わせるサポーター。画面の向こう側にいる相手の身体を想像しました。

後半はいよいよワークショップ。どうしたら他者の身体感覚を自分のものとして感じとれるのか、参加者は二人一組になり、それぞれ自分の身近にあるモノを手元に用意します。一方が相手に、そのモノの触り方を指示し、相手が触っている身体の動きを通して、それがどのような感触であるのか想像を膨らませていきます。

相手の感覚を想像した後には、画面の向こう側の空間をどのように感じたのかを、身ぶり手ぶりや詩などで表し、発表しました。「自分が持ってきたものとの関係を、相手が丁寧に表現してくれたことで、自分とものとの向き合い方を改めて見つめ直すことができたのが面白かった」「普段はしないようなモノへの触り方のアプローチや、カメラを通すからこその面白さを感じた」などのサポーターからの感想が寄せられました。

画面越しの相手から感じ取ったことを表現するサポーター

最後に、砂連尾さんからサポーターに向けて「世界は意味や言葉で埋め尽くされているわけではなく、まちなかにある木が喋りかけてきたなと思ったら、木に抱きついてみたり、土との関係性を持てたら楽しかったりもするので、体が自由にいろいろなものと関わることを楽しんでもらえたらなと思います」と締めくくりました。

お互いに身体を通して気持ちを伝え、感覚を共有し、言葉や意味だけに頼らないコミュニケーション。今後のTURNのサポーター活動においても大切な「他者との向き合い方」について考え、体感する機会となりました。

© Arts Council Tokyo