活動日誌

アニメーションをつうじて考える

2020.12.21

TURN運営スタッフ

交流先│

  • TDU・雫穿大学

絵描き、映像・アニメーション作家の松本力さんとTDU・雫穿大学(てきせんだいがく)のTURN交流プログラムの活動をご紹介します。

「TDU」は、引きこもりや不登校を経験した人、生きづらさを抱えた人たちが、自主的に学びを発見し、安心して表現できる場を通じて生きる力を取り戻し、将来の仕事や未来への意欲を培う場です。松本力さんは、2019年秋からTDUの前身にあたる団体に通い始め、現在は新型コロナウイルス感染症拡大の状況を踏まえ、TDUとは遠隔での交流をベースに続けています。

普段から「対話」を大事に活動するTDUの学生との交流は、松本さんからの「映像表現とは何か」を考えるさまざまな時代の映画・映像作品の紹介から始まりました。例えば、松本さんやご両親の生まれた年に制作された映画や映像を見て、そこに映り込む風景や人々の姿から、その時代の情景を想像することや、同時代の日本とアメリカのCMや記録映像を比較して見ることで、当時の家族の姿を感じ取ることもできます。
そのほか、松本さんが子供時代にご両親と訪れた遊園地で見た赤い車の思い出から生まれたアニメーション作品を、手製の映像装置で上映しました。自分と他者の記憶、はっきり思い出せないけれど続いている気持ちや時間が、アニメーションにすることで、何通りにも表現できることにも触れました。こうした対話を重ねながら、多角的な視点をもたらす映像表現の可能性について、TDUの学生とともに考えを巡らし、交流を深めました。

12月の活動では、松本さんのこれまでに紹介した映像表現についての話を受けて、TDUの学生からも、各自の記憶のエピソードや時間にまつわる考え方がたくさん語られました。

子供の頃に家族で出かけた地域のお祭りでの懐かしい思い出や少し怖くて不思議な夢、小学校の通学路で毎朝母に見送られながら感じた時の気持ちなどを人前で語ることで、記憶の片隅にあった自分だけの時間が、生き生きと動き出したようです。松本さんは、昔の切ない記憶も視点を変えて眺めてみることで、「思い出が立体的に浮かび上がってくる」といいます。TDU代表の朝倉景樹さんからは「それぞれの視点で語る記憶の共有が、他の学生の言葉や感想を引き出し、お互いの新しい発見にもつながっているようだ」というコメントがありました。

これから、TDUの学生たちが発表したエピソードをもとに互いに協力してアニメーションづくりに挑戦していきます。遠隔でのコミュニケーションは難しさもありますが、オンライン交流の中で見えてくる視点が、これからのTDUと松本さんとの共同制作において、どのような気づきや表現につながるか、その過程も楽しみです。

2020年11月に松本さんがTDUを訪問した際の交流の様子。オンラインで参加する学生も。
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