活動日誌

第5回TURNサポーター勉強会「現場からみるTURN」開催レポート

2020.12.18

TURN運営スタッフ

TURNの活動を多くの人へ豊かに届けることを目指すTURNサポーター。今年は「TURNサポーター勉強会」として、コロナ禍の状況を踏まえながら、8月から毎月TURNの活動やプロジェクトをサポートする際の知識と技術、より包括的なアクセシビリティ等を学ぶ場を開いてきました。

最終回となる今回は、TURN LANDを開催している気まぐれ八百屋だんだん(以下、だんだん)の近藤博子さんと、ハーモニーの新澤克憲さんを講師に迎え、TURN LANDの活動や、コロナ禍における福祉施設やコミュニティの状況をお伺いしました。テーマは「現場から見るTURN」。それぞれの現場で大切にしていることを知り、TURNらしい場づくりや心構えについて考える時間となりました。

■ コロナ禍における居場所や福祉施設の現状

世田谷の上町駅前にあるハーモニーは、心の病を持ちながら地域で暮らす人が日中集う場所です。30名ほどのメンバーが登録し、作業をしたり、趣味の活動をしたり、思い思いに過ごせる場所を提供しています。ハーモニーが大事にしているのは「集うこと」。仲間に会ったり、一緒に食事をとったりすることを大切にしています。
そんなハーモニーも、新型コロナウイルス感染症感染拡大防止のため、一時施設を閉鎖。その間も、在宅支援をしたり、オンラインを用いたり、さまざまな工夫を凝らしながら利用者と繋がる試みを行ってきました。

ハーモニーの新澤さん(左上)と手話通訳者(下)

だんだんは、元々八百屋を営んでいたところ、地域の人たちの悩みや相談事が集まってくるようになり、今ではこども食堂や寺子屋など地域に根ざした「コミュニティ八百屋」として活動を行っています。
新型コロナ感染症感染拡大防止のため、これまでのように一緒にご飯を食べることが難しくなったり、長期休校の影響で保護者の負担が増えたりしたことを受け、その間は予約制のお弁当を毎日つくっていたそうです。現在は毎週木曜日にお弁当をつくっているそうで、地域の人たちと一緒にアイデアを出し合い、続けることをモットーに活動を続けています。

気まぐれ八百屋だんだんの近藤さん(左上)と手話通訳者(下)

■ わからなさが繋ぐ、偶然の出会い

TURN LANDを始めて数年経つだんだんとハーモニー。実施しているプログラムの内容はそれぞれ異なりますが、だんだんは「リヤカー」、ハーモニーは「屋台」、という人力で可動できるモノを取り入れている共通点があります。
勉強会ではだんだんの「リヤカー」もハーモニーの「屋台」も、「可動できること以外に目的を持っていない」という点に注目が集まりました。「リヤカー」や「屋台」を用いて、街中でモノを販売するわけでなく、目的がハッキリしないところが、かえって人の興味を引いているそうです。
だんだんのリヤカーは、行った先々で興味をもった子供たちが色を塗ってくれるなど、街中での偶然の出会いを生んでいるとのこと。
街中に現れる「リヤカー」や「屋台」のもつ「わからなさ」や「怪しさ」は、ハーモニーの大事にしている要素で、新澤さんは次のように教えてくれました。

「福祉の世界にいると、どうしても(自分たちの活動やメンバーのことを)わかってほしいと思い、わかりやすく伝えようとしてしまうが、人はそれぞれわからない部分もあるし、きれいに整えてしまうことへの抵抗感みたいなものがある。怪しく思われても、それはいいじゃないか、怪しいけど面白いねくらいが、ちょうどいいんじゃないかな」

「コロナ禍では関係者しか施設に入れないとか、何かあったときの為に連絡先を控えておかなければいけないなど、人との出会いをコントロールしがち。そうした状況下でもいろんな人との出会いを失わないようにしたい」

講師から出た「わからなさ」「怪しさ」というキーワードを身体で表現する参加者の様子

■ コロナ禍での人と人との繋がりのつくり方

TURNサポーターは、TURNフェスなどの参加者が“その人らしく”その場にいられるお手伝いを役割として担っています。最後にサポーターに向けて、講師のお二人からコロナ禍での居場所や人との繋がりについて、言葉をいただきました。

近藤:「だんだんでは互いの違いを認めることを大事にしています。だんだんに来る子供たちの一人ひとりの状況は異なっていて、ゆっくり成長する子もいれば、飛び級をしちゃう子もいる。発達障害などの病名で片づけずに、人それぞれの特徴を受け入れることを大事にしています。TURNの運営や現場のサポートという役目は担いつつ、サポーターのみなさんも楽しみながらやってほしいです」

新澤:「ハーモニーでは、100%じゃなくてもいいから何かで繋がってみよう、と思っています。サポーターのみなさんには、既成概念で割り切らず、わからないけどその人と一緒に居ることを楽しむ、面白がる、ぜひそういう目をもっていただけるといいのではないかと思いました」

参加したサポーターからは「多くの人が、近くにいる人とだけ関係をもち、行き詰まりを感じているのではないでしょうか。もし、さまざまな人と繋がりをもてれば、また違う世界が開けるはずです。そしてアートはそのきっかけをつくる力を持っているように思います」という感想がありました。

講師のお二人の視点を通じて、TURNらしい繋がりのつくり方について学んだ回となりました。

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