活動日誌

ザ・東京ヴァガボンド x レッツ 第2日目

2017.8.4

テンギョウ・クラ

交流先│

  • 認定特定非営利活動法人クリエイティブサポートレッツ

朝、スタッフの方にお願いをしてお迎えの車に同乗させてもらう。
順番に乗り込んで来る利用者の人たちは「ん、誰?」というような目で一瞬こちらを見るが、あとはそれぞれのスタイルでレッツ到着までのんびりと座席に座っていた。
道すがら運転するスタッフさんと助手席に座ったフワフワ歌い踊る女の子との会話を聞いていて面白かった。
スタッフさんは彼女に気分良く1日を始めてもらおうとはするが、それは彼女の機嫌を損ねないように気を使った会話というより、友達がいつもの朝をいつものリズムで穏やかに心地よくスタートさせようという優しさとユーモアに満ちた会話だった。
添乗のスタッフさんも後部座席で二人の利用者さんに挟まれながらそれぞれの利用者に適度な会話を振っていき、その30分ほどのドライブで僕はスタッフさんたちの目線が利用者さんたちととても近い、居心地の良さを感じた。
レッツに着いた途端、いきなり床の上で横になる男の子を見て驚いていたら、スタッフさんが「夏は床の上が冷たくて気持ち良いですからねー」と笑いながら教えてくれた。
心地よさ、それはレッツの利用者さん達が一番に求め、そして保証されていることの一つだ。
考えてみれば心身の心地よさを二の次に義務や責任に応えるため日夜頑張ることが「やりがい」とか「使命」のようになっている場が当たり前のようにはびこる社会で、障害のある人もない人もブレずに己の心地よさを手に入れられる空間がレッツの他にどれくらいあるのだろうか。
午前10時を回った頃、屋上ではレッツの夏の風物詩であるプール遊びが絶賛開催された。
利用者さんの奔放な使用に耐えるため、レッツの「プール」は少々独特の形をしてはいるが、入っている利用者さん達は楽しそうに水を掛け合ったり溜めた水に潜ったりしている。
この日はいつも二階の爆音部屋でドラムを破壊する勢いで叩きまくっている通称オガさんがお休みだった。
オガさんのことが大好きな利用者の女の子が、僕の手を取って二階に行こうとする。
オガさんがいるかどうか確かめに行くのだが、部屋を覗いてもオガさんの姿はない。
諦めて一緒に一階へ戻るが、その数秒後にはまた僕の手を引いて二階に行くのだ。
当然オガさんは二階にはいない。
彼女は複雑な表情を浮かべながらまた僕と共に下へ降りる。
その階段の上り下りを彼女としながら、オガさんのことで頭がいっぱいになっている彼女を思ってオガさんに少し嫉妬した。
「オガさんモテるなー」
オガさんは子供達にも大人気で、オガエンジェルと言われるオガさんの親衛隊のような子たちも存在する。
オガさんが音作りに夢中になってレッツから帰ろうとしない時は、オガエンジェルたちがなんとか家に帰そうと奮闘するのだ。
子供にも女性にもこんなに気遣ってもらって、オガさんはいいなぁ!
午後、スタッフの方が少し遠くの公園まで子供達を連れて行くというので一緒に連れて行ってもらった。
そこは別名「忍者公園」と呼ばれる総合公園だったのだが、子供心をくすぐるアトラクション満載のよく出来た遊び場だった。
スタッフの方にくっついて子供達はやんやと忍者アトラクションを突破して、丘の上にある城を模したゴールへと駆け上がった。
僕は最後尾でちょっとのんびり屋らしい男の子と共に登って行ったが他の子達のペースが早く、気づくと僕たち二人になっていた。
男の子を励ましたりするが、マイペースなその子はアトラクションのコースから外れて遠回りをしながらゆるゆると進む。
スタッフさんと他の子供達はもうてっぺんまで行ってしまってだいぶ「差がついていた」。
「差がついていた」と括ったのは、それはあくまでも僕の見方では、ということだからだ。
僕は当然その男の子も他の子達と一緒に最後まで登りたいだろうと思っていた。
ところが彼は次のアトラクションを越えればゴールまでもう直ぐ、という所まで来たのに悠然と引き返し丘を下り始めたのだ。
僕は肩透かしを食らったような顔で彼が降りていくのを見ていたが、慌てて彼に付いて行った。
公園は見晴らしのいい山の中にあって、気持ちのいい風が吹き渡っていた。
降りる途中の芝生の上で、彼が突然足を止めた。
そしてやおら両手を広げると、風の中で目を閉じ体を心地よさそうに解放した。
その瞬間、僕ははっきりと自分の中で時が止まったのを感じたんだ。
そして同時に、「ゴールを目指し進み続けること」が沢山ある選択肢の一つでしかないことに気付かされた。
上を目指し頑張ること、それはそれで気持ちいい。
それと同じくらい自分が気持ちいい場所に留まることも気持ちいい。
公園からレッツに戻った僕は、お茶をもらいにレッツを訪問する青年と、ただでお茶をもらうことに引け目を感じているらしい青年のために報酬を得るための壁として胸を貸すスタッフさんとの日課となっている押し合い相撲を見ながら、「ここはすごいところだな」と改めて感じていた。