光の広場

ゆるやかでながい光の真ん中で、
ジブンの方位を刻む人影

知らぬヒト同士、
顔よせて相手を感じながらはじまる筆談

そろりそろりと広場に足を踏み入れてピンクの鯛シールを纏うヒトたち

行きかうヒトの影が揺らぎ
笑顔の花が咲き始める頃、厳かにプレイバックシアター が上演される
心の奥から手繰り寄せたそのヒトだけの無二の体験が演じられ、
居合わせたヒトたちが観客として座布団に並ぶ
時に涙し、無言のあついディスカッションがうまれる

鳩時計が鳴った!
大きな白い鳥が広場に舞いおりる
小鳥たちは囀り、ピンクの羽ばたきがそこここで波立つ
甘いメロディが今しかない、It’s Now or Never♪と絡みつく
波はウネリ やがて余韻が満ちる

おっちゃんたちがパラパラとやってくる
魔術師がいるらしく、なんとなくみんな同じポーズをはじめる

ちゃぶ台ではアルミホイルの魚やアクセサリーが生まれ、
LGBT、音、恋愛、ウンコ、手話、トピックが飛び交う
こどもたちは熱心
片隅のまん中で 少年が日々抱えていた どうしようもなさを解き放つ

踊りの波動はやさしくヒトをまきこみ、ひろがり、
ソロからペアダンス、セッションへ

アルミで飾ったお腹のデカいおっちゃんや、
たおやかな佇まいのおっちゃんや、艶やかなお姉さんも、
ゆるやかに混色して発光する

見なかったことにして足早に過ぎ去るヒト、
たちどまり眺めるヒト、
しゃがみこむヒト

時にツアーの一行が探るように通り行き、
目のプロジェクトがサインボードからまざりあう
マイカーに乗ったひと、筆箱をカタカタと奏でる少年、はしゃぐ子どもたち

この花はなんだろう
歓びの涙が溢れ、
触れ合い、
振動する

ジブンの声を聴きながら
自らをひらいたヒトたちが 生んだ 柔らかな時空間

家に帰りたくない夕暮れ

2017年夏
マダム ボンジュール・ジャンジ

© Arts Council Tokyo