活動日誌

純粋(ピュア)

2018.7.11

小野龍一アーティスト

ピアノのカバーを外し、弦にナイロン糸を通す。それを壁に取り付けた金具までぴんと張る。指ではじくと弦の音が、ピアノによってアンプリファイされ音がなる(コネクトされた鍵盤の音)。
この楽器をPURENOと名付けた。PURE(純粋な)+PIANOという造語だ。
この名前はサウンドアーティストのテリー・フォックスの以下の発言が元になっている。

「弦の片端を何かに固定し、反対の端を別の何かに固定して張ったら楽器になるかといえば、そうじゃないんだ。それは彫刻だ、(中略)それが出す音は純粋…純粋にそれ自体の音で変えられない」(1987)
今回のプロジェクトは、La Tola(ラ・トーラ)というエクアドルの旧市街で展開される。この街はいわゆる貧困街—社会的ディサビリティを持った地域だともいえるだろう。それは社会学的見地から眺めたLa Tolaだ。
僕が見たLa Tolaは…もっと複雑だった。
ある時、ひどくノスタルジックな感情に襲われたことがあった。街を歩いている時だった。突然、街の風景が日本の地元の下町と被って見えたからだ。そこにあったのは「貧困」、それだけではない。笑顔で商いをする女性、トランプゲームに没頭する人々、犬と戯れる子供たち…。
ミクロな視点を得ることで見える純粋さー複雑性がある。ピアノの音ひとつでもミクロの単位で見れば無数のスペクトルから成立していることが分かる。

「それが出す音は純粋…純粋にそれ自体の音で変えられない」

否、僕はこう思う。「純粋だからこそ」変えることができる。一本の木を削って彫刻が出来るように。まず「それ自体」を認識することから変革は始まる。

(『TURN-LA TOLA』、エクアドル・キトにて)