夕食後の時間に、集まってるみんなに、前回までの絵を描いているところや、絵巻物を元にしたアニメーションを編集した映像を、「Kana Machi Visio」と題して、みてもらった。
みんなで絵を描いている場面がMC、アニメーションが音楽のように、映像を交互に配置した。
無音にしようとおもったけれど、映像を早回しているみんなの音声をきゅるきゅるとノイズのように入れてみた。静かに見入ってくれた上映会だった。見終わるまで緊張していたけれど、面白がってもらえたようだった。
機材を片付けていたら、男の子が、ぼくのポケットを探ってきた。くすぐったくて、笑っていたら、彼の手には、ポケットの中のガムがあった。それで、先生にみつかったら、怒られるから、内緒で欲しいといっているらしい。あげていいのかな。困ってしまって、返してね、と手を出したら、ひとつくれたら、残りのガムを返すというようなそぶり。なかなかの駆け引き上手とおもいながら、ひとつあげた。それを繰り返し、彼は、そのつど、ガムを手中にしたのだった。
突然、彼がぼくの手をひいて、廊下に連れ出した。そこに洗面所があって、鏡の中の小さな丸いシミを指さした。彼が何を示そうとしているのか、ついてきた先生にもわからない。次に、壁の釘頭を隠していた塗装がひび割れて、同じような丸い跡を指し示す。まだわからない?といわんばかりに、今度は、柱にある小さな丸い汚れを指さした。ごめん…わからなかった。
彼は、もう、伝わらないなあ、と少しさみしそうな顔で、溜息をついた。