活動日誌

TURNフェス5 《声のスケッチ#2》とオノマトペ・マップ

2019.8.20

井川丹アーティスト

この5月から、大西健太郎さんと宮田篤さんが交流を続ける小茂根福祉園でのTURN LANDの活動に混ぜてもらっています。今回のTURNフェス5では、その出張版とも言うべき展示形式のパフォーマンス『「お」ダンス―影の漂流地点にて』の音響制作を担当。予め作成した音に重ねて、展示空間で集めた沢山のオノマトペ(擬音語や擬態語)を「音」として再び同空間へリリースすることで、ページをめくるように刻々とうつろう音の風景を描きました。
 
 
【オノマトペの集め方】
 
①協力してくださる来場者やサポーターの皆さんに、この部屋で生まれたオノマトペを集めていること、会話の内容を録音したいことを伝えます。
②「部屋に入った時、最初に感じたこと」や「部屋で過ごしてみて今、体に残っていること」などを切り口にインタビューします。
③会話の中で、それぞれの関心の中心について掘り下げつつ、徐々にその時の「ナニカ」をオノマトペ化してもらいます。意図せず会話に現れるオノマトペも逃さず集めます。
④この過程で生まれたオノマトペを2回ずつ発声してもらいます。
⑤特大の五線をガイドに、④の時の声の高さ・スピード感・イントネーションなどを一緒に確認します。これらの情報を元に、オノマトペをローマ字で五線シール上に書き込むことによって、楽譜としても記録します。

⑥どこでどんなオノマトペが生まれたのか一覧できるように、部屋の見取り図上に⑤の五線シールを貼った「オノマトペ・マップ」を作ります。

会場の見取り図

オノマトペ・マップ

【集めたオノマトペたちの行方】
 
①録音したオノマトペ
⇒次の2つの方法で音響として再び展示空間へ還すことにより、場を回遊させました。
 
(1)オノマトペがそれぞれの生まれた場所で聞こえるように、会場で流す音響へ組み込む。(数分に1度のペースでランダムに流れる。)この作業を会期中くり返すことで、日を追うごとにオノマトペが空間へ堆積していく。

(2)オノマトペをコラージュした小曲を制作し、最終日にみんなで寝転んでぼーっと聴く。

②楽譜として記録したオノマトペ
⇒「オノマトペ・マップ」にして来場者やサポーターさんとシェアしました。協力してくださった皆様、ありがとうございました!
 
【オノマトペを集めてみて】
 
初めての試みでしたが、オノマトペ化するやりとりの中に皆さんの過ごした時間を追体験するような瞬間があって、おもしろかったです。

あるサポーターVさんが、「グーッ」というオノマトペをシェアしてくれました。これは、小茂根福祉園のTさんとの「手の会話(大西さんが園で行っている活動の1つ)」中に、TさんがふいにVさんへ体をあずけてきた時のことを切り取ったオノマトペです。予期せず手にかかった体の重み、体温、支える腕に込めた力、その瞬間の心の動き…いろいろな要素がこの一言に凝縮されています。
「今のこの感動も、きっと時間が経てば薄れていってしまう。でもオノマトペにしたことで、このオノマトペを覚えている限り、この手の感触を忘れないでおける」とおっしゃっていたのが印象的でした。私も「グーッ」と口に出す度に、Vさんの表情と共に、あの時の手の感触がよみがえってくるような気がするのです。

© Arts Council Tokyo