活動日誌

暗渠の下

2019.10.11

永岡大輔アーティスト

交流先│

  • 渋谷区障害者福祉センター はぁとぴあ原宿

「はぁとぴあ原宿」に到着。

今日は交流初日。はぁとぴあ原宿の1日の活動を見学。
活動内容ごとに7つの工房がある。音楽や体操、織物、他にもいろいろな工房がある。

その一つの工房「紙」で、ソガさんはずっとバスの絵を描いている。
ポテチとレモンティーも描く。
とにかく好きなものだけ描くらしい。
最近はビールも描くようになったんだとか。
なんでも赤い色のバスが好きみたいだ。だから東急バスをよく描くらしい。
「京王バスは?」と聞いたら、「赤いから好きだ」と教えてくれた。
「丸ノ内線は?」と聞いたら「それは地下鉄だ」と言われた。

そうそう、同じ工房にコウコさんという方がいる。
去年TURNフェスに参加していたペルーから来たアーティストのヘンリーとコウコさんは友達らしい。
僕もヘンリー知ってるよと言うと、コウコさんは随分嬉しかったのか、ずっと「友達~っ!」とハグをしてくれる。
コウコさんの心の開き方が痺れるほどに素敵だ。
コウコさんはここで生活しているのだと教えてくれた。
工房の時間が終わったので、エレベーターの前でお別れをした。

お昼は食堂でみなさんに混じってお弁当を食べたのですが
黙って一人で食べていたので、みなさんが食べている様子をずっと見ていました。
見惚れていたというのが正確かと思います。
というのも、みなさん、実に自分らしくご飯を食べます。
誰一人、同じような食べ方をする人がいません。みんな全く違う食べ方をします。
こんな嬉しいことってあるだろうか?
30人が30通りの食べ方。
そしてこんなに難しいことってあるだろうか?
僕は僕らしくご飯を食べているのだろうか?
ここにいる人たちはそれが当たり前にできる。

副施設長が、屋上にある畑を案内してくださった。
落花生や綿花、ナスやピーマンが実っている。
これからの季節は、近所のカレー屋さんに卸すほど、玉ねぎを育てるそうだ。
栽培のため、土の用意をしている。
屋上からは、施設の周辺に案外住宅が残っているのがわかる。
「キャットストリートは、もともと渋谷川だったんです。」と副施設長。
あぁ、ここはかつて川だった。いや、暗渠あんきょになっているだけで、やっぱり今も渋谷川は流れている。
ただ、目に見えないから気づけなくなっているだけ。
見えないとか気づけないというのは内面的なことなのかも知れない。
そもそも、目は、心と深く関わるものだから。
だから暗渠的なものは心にも存在する。
僕らしくご飯を食べることも、きっと心にできあがった暗渠に隠れているものの一つなんだろうと思う。
ここに通うことはそういう普段の生活の中でできた暗渠によって見えなくなっているものと出会えるような気がする。
とても楽しみだ。

© Arts Council Tokyo