活動日誌

第1回サポーター勉強会「TURNを知る」開催レポート

2020.9.11

TURN運営スタッフ

今年は「TURNサポーター勉強会」として、TURNサポーターを対象に、コロナ禍の状況を踏まえながら、プロジェクトをサポートする際の知識と技術、アクセシビリティ等を学ぶ場を開き、その知見を今後のTURNの活動に生かしていく予定です。

8月28日に開かれた1回目のTURNサポーター勉強会では、TURNの成り立ちや、コロナ渦におけるTURNの活動を伝える場がオンラインで開かれました。当日の様子をお届けします。

当日の様子。画面右はTURN監修者の日比野克彦

TURNのいま

前半は、司会のライラ・カセムより、コロナ渦におけるTURNの活動を紹介。アーティストが交流先の施設やコミュニティに通いながら、共働活動を行う「TURN交流プログラム」では、対面での交流が難しくなり、遠隔ならではの交流を模索しています。

ラップクリエイターのマチーデフさんは、これまで「豊島区立心身障害者福祉ホームさくらんぼ(以下、さくらんぼ)」を訪問し、施設のメンバーとの何気ない会話や、日々の生活での気づきから生まれたラップをつくり、スタッフと共にさくらんぼでのお祭りやTURNフェスで披露するなど、対面で関係を築きながら交流をしてきました。

現在は、コロナ禍でさくらんぼの利用者やOB・OGが感じたことを、オンラインやメールで聞き取り、その内容から歌詞が生まれ、オリジナルラップをつくる交流をしています。マチーデフさんは、コロナで大変なことも多いが、「会えなくても皆と会いたい気持ち」など、今だからこその言葉をラップにしたいと考えているそうです。

施設が主体となってアーティストとともに施設を地域にひらいていくTURN LANDでは、「クラフト工房La Mano(ラマノ)」の活動についてサポーターに共有しました。

ラマノは、物づくりや手しごとで社会と繋がるをモットーに、手染、手織りによる天然染料を使った製品を作っている場所です。アーティストの五十嵐靖晃さんとともに「手のプロジェクト」を2017年から展開してきましたが、今年の前半はオンラインでの開催に。ラマノの畑ではなく、参加者が各自の家で綿花を育て、日時を決めてオンラインで繋がりながら、綿花の成長の様子やその過程で思ったことを語り合いました。

五十嵐さんは「コロナで移動できないことと、綿花が移動できないというのが似ている。移動することで世界をとらえるのではなく、止まっていることで、星が動いている、鳥が来た、風が吹いている、などに気づくことができる。止まるからこそ見える世界の動きがあるのでは」と考えたそうです。

日比野克彦が語る「想像する力」

勉強会の後半はTURN監修者の日比野克彦より、TURNのはじまりと、東京藝術大学美術館で開催した展覧会「TURN on the EARTH〜わたしはちきゅうのこだま〜」の紹介を行いました。

「TURN on the EARTH〜わたしはちきゅうのこだま〜」では、お互いの気配が感じられるように部屋の区切りに半透明の生地(オーガンジー)を用い、情報を読み取れるマークにタブレット端末をかざすと音が鳴ったり、作品説明や動画が飛び出したりする仕掛けが用意されました。この仕掛けの背景について日比野は「鑑賞者の人数によって音のタイミングやハーモニーが変わるなど、会場内に偶発性が生まれ、TURNのコンセプトが全体から醸し出されるよう工夫をした」と語りました。

オーガンジーで区切られた会場(左)。情報を読み取れるマークにタブレット端末をかざすと、映像が再生され音も流れる(右)。

司会のライラと日比野とのクロストークでは、今だからできるTURNの交流について話が広がりました。 日比野からは「物理的な移動はできませんが、過去に動いていたことに思いを馳せると、そこにいた自分を思い出すことができる。それは誰しもが持っている力です。実際に移動しないと感じられないことと、互いに想像しあえばつながれること。この2つを通してTURNの活動をしていきたいと思います。TURNは「交流」が基本なので、物理的にアーティストが施設に行けなくなるとできないと思いがちですが、そうではなく、移動できないが故に考えられる交流について、あの手この手のチャレンジができる時期だと思っています」という想いが語られました。

オンラインで参加したサポーター

その後、サポーター同士のグループトークへ。今日の話で気になった内容について、3〜4人のグループで自由に意見を交わしました。サポーターからは「自分が知らなかったTURNの活動について知ることができ、 よりTURNの活動に興味を持つことができました」といったコメントが寄せられました。

最後に日比野からサポーターに向けて、サポーター勉強会を通じて感じたことを言葉として残してほしい、と次の言葉で締めくくられました。「TURNはものではなく、出来事です。その時に感じたことを書き留めておくことが大事です。今でないと感じられない言葉の積み重ねが、宝になっていきます。作家も1枚の絵を仕上げていくのに何度も絵の具を重ねていきますが、言葉も同じです。TURNに参加した人たちの気持ちを言葉にして、それを半年、10年と重ねていくことで、活動を振り返れるものになるので、ぜひ言葉に置き換えて書き留めてください」

社会が大きく変動する今、TURNの現場も新しい形を模索しています。そんな今だから思うことや新しい気づきをサポーターの皆さんと共有し、じっくりと時間を重ねながら、これからの活動をつくっていきたいと思います。

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