活動日誌

第4回TURNサポーター勉強会「やわらかなアクセシビリティ」開催レポート

2020.11.22

TURN運営スタッフ

TURNの活動を多くの人へ豊かに届けることを目指すTURNサポーター。今年は「TURNサポーター勉強会」として、コロナ禍の状況を踏まえながら、8月から毎月TURNの活動やプロジェクトをサポートする際の知識と技術、より包括的なアクセシビリティ等を学ぶ場をオンラインで開いています。

第4回の勉強会のテーマは「やわらかいアクセシビリティ ~やわらかな ややわらやかな わやらかな コミュニケーションのはじまり~」。ろう者の詩人・Sasa/Marie(ササ・マリー)さんを講師にお招きし、手段を限定しない対話の方法や、コミュニケーションの本質を学びました。

講師のSasa/Marie(ササ・マリー)さん

■ ろう者の詩人、ササ・マリーさん

手話をベースにした「サインポエム」と呼ばれる身体表現で自作の詩を読むマリーさん。まず、マリーさんからこれまでの活動についてお伺いしました。

生まれたときから難聴があったマリーさんは、聞こえる人たちと同じ普通学校に通い、先生や話している相手の口を読み取ったり、筆談と発話でコミュニケーションをとっていました。手話を学び始めたのは大学生の頃。そこで初めて「おしゃべり」の楽しさを知ったといいます。

マリー: 手話を学んではじめて、「おしゃべりってこういうことか!こんなに楽しいことなんだ」と知りました。高校までは、クラスメイトとのコミュニケーションは筆談が一番有効でしたが、筆談では必要なことしか書かない。最低限必要なやりとりしかしない。けれど手話に出会い、「世の中のコミュニケーションの場にはこんなに伝わる言葉が溢れているのか」と衝撃を受けました。

マリーさんの詩の制作の原点には、幼少期に一人で想像を膨らませたり、言葉を使って遊んだりしていた経験があるといいます。その後、大学で手話を学び、演劇と、詩を朗読する「ポエトリーリーディング」を始めたことをきっかけに、手話を使った身体表現で詩の世界を表現する「サインポエム」へと展開していきました。

続いて、TURNジャーナル SUMMER 2020ーISSUE 04にマリーさんが寄稿した詩「のっぺらぼう」をサインポエムで表現した映像を鑑賞しました。この映像作品には、手話と身体で表現するろう者の詩人、声で参加する詩人、音楽家、大道芸のパフォーマーが出演しています。サインポエムはその場の空気感を掴み、演者は即興で表現をしているそう。そして、事前につくり込まないスタイルは、観客への届け方にも関係しているとマリーさんはいいます。

マリー: 演者同士でも投げられたものを受け止めてその場で表現するし、お客さんにも投げてみてキャッチボールしながら、それぞれの受け止めたい色々な形で伝わっていくことも含めて楽しんじゃおう、という意図があります。

マリーさんが所属しているユニット「でんちゅう組」によるサインポエム「のっぺらぼう」

■ 「やわらかなアクセシビリティ」を考えるためのワークショップを実施

後半では、参加者を交えたワークショップを行いました。
まずはウォーミングアップとして、マスクをつけたマリーさんが話している内容を推測するアクティビティを以下の手順で行いました。

① マスクをつけたマリーさんが口話で何かを話す。
② ①のマスクをつけた口話に、手話を加えてもう一度話す。

手話で話すマリーさん

そして、マリーさんが何を言ったのかを想像し、サポーターがそれぞれチャットに書き込みました。
はじめはなかなか答えられる人がいませんでしたが、そこに手話が加わることで、「今日は11月22日」、「これから2つのグループにわかれてグループワークを行い、4時に終わります」など、続々とサポーターから答えが書き込まれました。

正解は、「今日は11月22日TURNサポーター勉強会の第4回です」。なぜ1回目と2回目でサポーターの反応が変わったのでしょうか?マリーさんは次のようにアクティビティの意図を説明しました。

マリー: 聞こえない人にとって、マスクをつけたまま話されると、「これはなんじゃ?今話しているの?口は動いているの?」と感じてしまうことが伝わったでしょうか?手話や、数字を手で表すように、何か手がかりがあるのとないのとでは、伝わり方、受け止め方が全然違うことが、お伝えできたかと思います。ちなみに、先ほど紹介した「のっぺらぼう」というポエムでは、この「マスクをしていて目玉しか見えない人たちに囲まれている状態」を表現しました。

続いてのワークショップは、Zoomの四角い枠を窓に見立て、その枠を使って窓を表現してくださいというお題で行いました。一人ひとりが言葉を使わずに身振りだけで行う表現を体験し、サポーター同士で意見を交換しました。窓というシンプルなテーマに対してもそれぞれの表現と解釈があることがわかりました。

窓から侵入する泥棒の様子を身振りで表現したサポーター

そして最後のワークショップは「思ってたんと違った」。今までの人生の中で、「思っていたのと違った!」という経験を共有するワークです。

あるサポーターからは、「昔、はじめてサッカーのワールドカップを見たときに、ヨーロッパのチームは白人の選手が多いのかと思って見ていたが、実際は移民系の人や、ダブルの人、黒人の人が多かった。そのときは『あれ、思っていたのと違うな』という違和感がありました」という体験を共有。

また、話を共有することを通じて、「先入観をもって人を見てしまうことがある。また発言するときに、『一般的には』と自分の普通を相手に押し付けてしまうことがある」という気づきも生まれました。

このワークでマリーさん伝えたかったことは、次のようなことでした。

マリー: 自分や相手の先入観に気づいたときに、それをどうやって切り替えていくか、チャンネルをたくさんもっていることが大事だと思います。

そして、最後にマリーさんが考えるアクセシビリティについて語られました。

マリー: コミュニケーションはこうでなければならないという気持ちを外すことが、今日の一番の目的でした。「耳が聞こえない人とは、手話をしなければいけないのではないか」、「筆談をしなければいけないのではないか」という考え方ではなく、「どのようなコミュニケーションを必要としているのかは、やってみないとわからないよね」と思って対応してみてほしいです。「あ、違った」ということがあってもいいんです。そういうときには「これだったらどうかな?」と試してみてください。それくらいのやわらかさをもってアクセシビリティを考えてみてもいいのではないでしょうか。

人とのコミュニケーションに正解はなく、目の前の相手を見て、手がかりを見つけながらやわらかな気持ちでコミュニケーションを始めることが大事であることを学んだ勉強会となりました。

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