活動日誌

光と心の隠喩②

2022.1.5

宮田篤アーティスト

交流先│

  • 板橋区立小茂根福祉園

《きらりグッと》は、「ヒヤリハット」とのだじゃれ・言葉遊びです(※)。だじゃれや言葉遊びは、いっけん無関係な言葉たちにつながりを持たせます。2つの言葉のあいだで考え続けた先に何があるのか、この言葉を考えた小茂根福祉園の皆さんとTURNの活動を通して、探り続けてきました。大西さんと《「お」ダンス》《こもね座》《ギガマスバイオーム》などなど、さまざまな形で、この言葉の意味を考える機会を作ってきました。

《きらりグッと》は、仮説です。誰かのちょっとした良いところや、心に残ったことなど、「きらり」としたり「グッと」きたりした時の気持ちを切り取って、他の人に伝えてみる試みです。あくまで試みなので、これまではそうしていろんな《きらりグッと》を見つけてきましたが、まだこれからどうなるかは分かりません。

《きらりグッと》は、まいにち小茂根福祉園のあちこちをとびかっています。おおぜいに注目されるものもあれば、屋上のかたすみでヘルメットをかぶり、その姿を鏡でみてにやけるような、だれも気づかないこっそり輝く《きらりグッと》もあります。心をくだいて目の前の仲間たちに向き合うと、誰の前にもきまぐれに立ち現れてくるものだと、そう思うようになりました。

《きらりグッと》は、光と心の隠喩です。それはあちこちをとびかって、とつぜんにあらわれ、気づくと消えてしまい、形がありません。それを見た人の中にだけ、胸に灯がともるようにして、しばらくとどまります。あっという間のことに気づかない人もいるでしょうし、夜ねる前にきょうあったことを思い出し、じぶんの胸の灯に気づく人もいるかもしれません。

《きらりグッと》は、それを誰かに伝えようとするとき、はじめて輪郭をもって語られることができます。とても面白い取り組みです。この言葉を教えてくれた小茂根福祉園の利用者さん、職員さん、みなさんに感謝しています。

※小茂根福祉園では、利用者のさまざまな魅力をより深く知るために、大事故につながる可能性のある軽微な事例を共有する「ヒヤリハット」報告からヒントを得て、《きらりグっと》という言葉が生まれました。

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