活動日誌

第2回TURNミーティング レポート

2017.10.9

TURN運営スタッフ

10月8日(日)、東京藝術大学を会場に「第2回TURNミーティング」が開催されました。TURNミーティングとは、TURNに関わるアーティストや施設の関係者、外部からのゲストをお招きし、トークやディスカッションを通してTURNについて一緒に考えていくイベントです。今年度は、年間を通して計4回のミーティングを実施していきます。第2回となる今回のテーマは、「TURNを検証する I」。TURNは今年度で3年目を迎えますが、改めて「TURNとは何か」ということを、これまで実施してきたプログラムを振り返りながら、これからの方向性も見据えつつ検証していこうという試みです。

まず前半では、8月に行われた「TURNフェス3」について、会場のイメージや映像を見ながら、日比野さんと森が振り返りをした後、南米から帰国したばかりのアーティスト、永岡大輔さんと五十嵐靖晃さんから「TURN in BIENALSUR」の報告が行われました。

TURN in BIENALSUR
TURN in BIENALSURは、南米の様々な都市や地域で展開された国際現代美術ビエンナーレ「BIENALSUR」に、TURNが招聘される形で実施されました。日本からは永岡さん、五十嵐さんに加え、岩田とも子さんの計3名のアーティストが参加し、日本の伝統的な技術や作法を携えて、現地の施設で交流プログラムを実施。最後に、現地の美術館で展示やワークショップなどの発表を行いました。

ブエノスアイレスで活動した永岡さんは、伝統的な技法として和菓子を取り入れ、発達障害児のための特別支援学校「C.E.N.T.E.S N°3」で交流を行いました。「はじめは自閉症の子供たちにどう対応すれば良いかわからなかったけれど、交流を重ねていくうちに、彼らの行動に意味があるということを理解していきました」と永岡さん。最初は子供たちも、慣れない和菓子に対して「気持ち悪い」と抵抗感を示していたようですが、少しずつ信頼関係が生まれ、一緒にお菓子作りを行い、最後には正月飾り「餅花」をモチーフにした作品を展示することができたそうです。

五十嵐さんは、ペルーのリマに約2ヶ月間滞在し、発達障害や知的障害のある子供や大人が通う通所施設「Cerrito Azul」と交流しました。五十嵐さんは町田にある「クラフト工房 La Mano」の藍染の綿糸を持ち込み、そこにアンデスで出会ったアルパカの糸を取り入れました。「自分にとってTURNとは、人間らしさを取り戻す・学び直す取り組みだと位置付けている」と語る五十嵐さん。今回も交流のスタートとして糸巻きを行ったそうですが、糸玉の形にそれぞれの手癖が反映されるのが面白いのだそう。会期が終わった後も、サポートしてくれた学生と、Cerrito Azulの利用者の人たちの交流が続いていくことになったようで、そうした繋がりが生まれて嬉しいとお話しされました。

>>「TURN in BIENALSUR」の詳しい内容は、こちらをご覧ください。

そして後半は、アーティストの藤浩志さんと、キュレーターの田中みゆきさんをゲストにお迎えして、スピーチとクロストークを行いました。

ゲストスピーチ:アーティスト 藤浩志さん
藤さんからは、普段考えていることや、最近の活動の中からTURNに関連することをお話しいただきました。これまで、様々な場所で数多くのアートプロジェクトを行ってきた藤さん。場作りや仕組み作りにおいて大事だと思う要素として、「寛容」ということについて触れました。
「完璧」になろうとすると、その裏側で何かが排除される状況が生み出されてしまうけれど、不完全・未熟である状態で臨んでいくこと、それぞれの特性を認め合う場で、緩やかに連鎖して展開していくことに面白さがあり、今は意味がないと思われることも10年、20年後に形になっていくことがある。そういった活動が、TURNの目指しているものなのではないか、とお話をいただきました。

ゲストスピーチ:キュレーター 田中みゆきさん
続いてのゲスト田中さんは、これまでに、義足のファッションショー、視覚障害とダンスとテクノロジーを組み合わせた「dialogue without vision」、ボーダレス・アートミュージアムNO-MAを会場に行われた「大いなる日常」展などの企画やキュレーションをされてきました。障害は「世界を新しく捉え直す視点」であるとして、福祉的な視点ではなく、人間の知覚の幅や表現の可能性を広げるものだという姿勢で活動を行ってきたと言います。
現在取り組んでいる、全盲の人が映画を撮るプロセスを映像化した「ナイトクルージング」をご紹介いただきながら、「健常者と障害者どちらか一方が提供するのではなく、お互い違っている状態のまま、無理に分かり合うのではなく、面白いところを活かし合うような協働とは何かを考えながら活動している」とお話を締めくくりました。

クロストーク:TURNについて検証する
そして最後は、日比野さん、森を交えてのクロストーク。TURNフェス3についての感想をゲストのお二人に伺いながら、TURNについての検証を行いました。

TURNについて、「展示だけでなく、現場や状況を作っているというところに興味を持った」と、藤さん。田中さんからは、「フェス1、2は見ることの比重が大きかったけれど、3ではアクセシビリティなど、色々な楽しみ方の入り口があって良かった」と感想をいただきました。
その一方で、田中さんは、「現場で起こっていることの面白さを、前提を知らないで展示として見た時にどう感じるのか」と、施設での関係性を作品として表現することの難しさを語ります。また、藤さんも、展示がショーケースのようになってしまう危険性や、それ以外の様々な所にある「現場」を見せていくことの必要性を指摘されました。

それを受けて、森からは、美術館以外の展開の場としての「TURN LAND」構想について触れました。TURN LANDでは、普段は限定された範囲で活動を行っている福祉施設やコミュニティスペースを、アーティストとともに地域にひらき、文化施設としての機能をつくりだす試みです。

また、日比野さんからは、「TURNでも、現場に行って見つけたことが次の流れにつながることもあるので、そういった出会いや気づきは大事にしていきたい」と、藤さんの活動から受けた感想を述べつつ、これからは海外のアーティストが日本のTURNに参加したり、施設間での交流を作っていきたいと、今後のビジョンが語られました。

ご参加いただいたゲストの皆さま、ご来場いただいた皆さま、どうもありがとうございました。

NPO法人Art’s Embrace 岩中可南子
写真:伊藤友二

© Arts Council Tokyo