[板橋区立小茂根福祉園とTURN]風が吹き 、夢はおどる ー Episode0:小茂根福祉園について

取材・文:長瀬光弘

東京都板橋区にある知的障害者通所の施設「小茂根福祉園」。なぜ、就労継続支援や生活介護サービスを行う小茂根福祉園がTURNに関わることになったのでしょうか。複数年継続しているアーティストとの活動のきっかけを紹介します。
<「TURN JOURNAL 2018(2019年3月発行)」より>

小茂根福祉園で「手の会話」を行う大西健太郎(左)と利用者 撮影:冨田了平

「小茂根福祉園は東京都板橋区にある知的に障がいのある人の福祉施設です」

これは、小茂根福祉園のホームページに記載されている文言だ。1982年に板橋区から管理運営委託を受けて開設。設立70年を超える社会福祉法人恩賜財団東京都同胞援護会が運営している。2011年には指定障害者福祉サービス事業者として、就労継続支援B型サービス(定員30人)と生活介護サービス(定員40人)を開始し、今も継続している。

東京メトロ有楽町線「小竹向原駅」から歩いて15分ほどの閑静な住宅街の一角に小茂根福祉園はある。建物は3階建てとなっており、1階は生活介護サービスを利用するメンバー、2階は就労継続支援B型サービスを利用するメンバーが主に使用している。

板橋区立小茂根福祉園の外観

生活介護サービスでは、自立した日常生活または社会生活を営むことができるよう、介護を必要とする方に対して、食事や排泄、移動などの介護を行うとともに、創作活動や生産活動、社会参加の機会を提供。就労継続支援 B 型サービスでは、自立した日常生活または社会生活を営むことができるよう、雇用によらない就労の機会を提供し、生産活動を行うほか、生活支援や余暇支援を行い、社会参加の機会を提供している。

スローガンは「Yes! I’m here」

小茂根福祉園内で販売している「フクロウ珈琲」。オリジナルブランド『KOMONEST(コモネスト)』の活動の一つで、自家焙煎している。

小茂根福祉園のスローガンは「Yes! I’m here」。このスローガンに込められているのは、かけがえのない家族と社会の一員として私が私らしくいられるよう、ゆっくりと人との関わりを築きながら長くこの地域に住み続けられるように、という願いだ。「住み慣れた地域での“私らしい普通の暮らし”を支援します」「地域と協働し誰もが住みやすく優しい街づくりに貢献します」という基本理念を基に掲げられている。

『KOMONEST(コモネスト)』というブランド

「フクロウ珈琲」の豆やオリジナルグッズを販売

小茂根福祉園の特徴は『KOMONEST(コモネスト)』というグッズやコーヒーのブランドを持っていることだ。メンバーが描いた絵を用いてデザインされたバッグや財布などの小物。オリジナルブレンドで自家焙煎する「フクロウ珈琲」などを定期的に販売している。こうした活動を始めた経緯を工藤かおる前園長はこう語る。

「利用者は企業から受託した軽作業によって賃金を得ています。しかし、それだけをやっていてもなかなか賃金を上げることはできません。少しでも利用者の賃金を増やせないか、と考えていたところアートディレクターの加藤未礼さんと出会い、2009年に『KOMONEST』というブランドを立ち上げました」

メンバーが描いた絵をもとに作成したTシャツやバッグ

メンバーの描いた絵が、デザイナーの力を借りることで価値のある商品となる。受託作業だけでなく、自分たちで価値のあるものを生み出し、販売することで、わずかながらでも賃金を上げることができた。「区立施設なので、設備投資にも限界があります。限られた資源の中で、高い価値のものを生み出すのに、ブランディングは大きな力となりました」と工藤前園長は続ける。

「『KOMONEST』という活動を行う小茂根福祉園なら、TURNにもきっと協力してくれるのではないか」。ある日、TURN 参加アーティストである富塚絵美は、知人からこのように、小茂根福祉園について教えてもらった。TURN への参加施設を探していた TURN コーディネーターの奥山理子が富塚からその情報を聞いたところから、小茂根福祉園との関係は始まっていく…。

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