活動日誌

クラフト工房La Mano「テレ手のプロジェクト2020-綿花から糸へ‥-」vol.1、vol.2開催レポート

2020.7.31

TURN運営スタッフ
2020年5月 参加者の自宅ベランダで育てている綿

東京都町田市にあるクラフト工房La Mano(ラマノ)は、物づくりや手しごとで社会と繋がるをモットーに、手染、手織りによる天然染料を使った製品を作っています。ラマノをフィールドに、アーティストの五十嵐靖晃さんとともに、TURN LANDのプログラムとして「手のプロジェクト」を2017年から展開してきました。「手のプロジェクト」では「手」にまつわる行為や所作、表現に着目し、地域の方々や一般の参加者とともに一から畑を耕し、綿づくりを行っています。

今年は新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けて、残念ながらラマノに集う形での活動はしばらく難しいと判断。この状況下でできる活動として、オンラインでつながる「テレ手のプロジェクト」を施設スタッフ、五十嵐さんとともにはじめることにしました。

「テレ手のプロジェクト」では、ラマノのスタッフやメンバー、2019年度からのプロジェクト参加者がそれぞれの家の庭やベランダなどで綿を育てていきます。同じ日に綿の種を蒔き、綿を育てることを介して、オンラインで繋がります。

綿の栽培の現場がラマノから自宅に移ったことで、参加者の日常や人と綿との関係性に変化があったようです。

今回は5月と6月に開催したイベントの様子と参加者の声をレポートします。

■今年も種蒔きの季節が到来!(2020年5月「テレ手のプロジェクトvol.1」)

2018年3月から開催してきた「手のプロジェクト」ですが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響をうけ、2月より活動を休止。

ラマノでも、4月から利用者さんは在宅での活動となり、いつもより静かな春を迎えました。

アーティストの五十嵐さんはこの状況を受け、今だからこそできる活動をラマノのスタッフとともに考えました。そして今年も綿の種を蒔く季節が訪れる中、参加者がそれぞれの場所で綿を育てるプロジェクトを始動しました。

5月中旬、ラマノから一通の手紙が参加者に届きます。
中には小さな種が数粒と、種蒔きのポイントについて。

そして五十嵐さんの言葉が添えられました。
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「テレ手のプロジェクト」

会えない時間は想いを育む時間。
それぞれの家で、おんなじ日に綿の種を植えて、
その成長を楽しみながら、遠くの仲間に想いを馳せる。
綿ができたら持ち寄って、それを紡いで糸にしよう。
会えない時間に育んだ、想いを糸に紡いでみよう。
綿ができたら再会しよう。

2020年4月24日 五十嵐靖晃
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ラマノから参加者に届いた手紙と種

5月16日、迎えたイベント当日。雨音が聞こえる中、参加者がオンライン画面上に集まりました。少し緊張した面持ちでの自己紹介では、参加者がラマノのある東京都町田市だけでなく、千葉、埼玉、神奈川。更には岐阜、北海道など様々な地域から集まっていることが分かりました。

そして、いよいよ種蒔き。ラマノ施設長の高野さんや、以前ラマノにゲストで参加いただいた、和綿栽培・手つむぎ指導活動を行うTokyo Cotton Villageのトミザワタクヤさんに種を蒔くときのポイントを教えていただきながら、各自の庭やベランダで同時に綿の種を蒔きました。ラマノの畑でも、参加者一人ひとりの名前を書いたプレートが立てられ、その隣に種が蒔かれました。自宅の綿とラマノの畑の綿、どちらが早く芽を出すのか楽しみです。

オンラインで繋ぎながら同時に種を蒔きました。

参加者からは「種が届いて、みんなで蒔くのが楽しかった」「芽が出るのが楽しみ」などの感想が寄せられました。

緊急事態宣言下で活動の範囲が狭まる中、ラマノから種が届き、各地にいる参加者とともに種を蒔いたことで、遠くの場所や人に意識を向ける機会になったのかもしれません。

一方、これまでの「手のプロジェクト」ではラマノの場をひらき、畑作業をしたり、母屋で車座になって糸紡ぎをする中で、自然と参加者同士の交流が生まれていたのだと、気づかされました。

4年目を迎える「手のプロジェクト」の延長線として大事にしたいこと、そしてオンラインだからこそできることは何なのか、これからも試行錯誤しながら挑戦していきます。

■それから数日後…

参加者同士が気軽に綿の成長の様子を共有しました。

種を蒔いた次の日から、毎日プランターの様子を確認しては発芽するのを心待ちにしていたという参加者の声も聞かれました。そして、種蒔きから5日後、1人目の「芽が出た!」という報告が。その後も続々と、写真とともに発芽や成長の様子が届きました。「6つ芽がでたから6人兄弟です」とわが子のように報告してくれる方も。

しわしわの芽が顔を出した
ぞくぞくと開く双葉
双葉の下には本葉がチラリ

■種を蒔いてから44日目(2020年6月「テレ手のプロジェクトvol.2」)

6月28日、2回目の「テレ手のプロジェクト」を開催。前回、種を蒔いたメンバーが再びオンラインで集まりました。

今回は、アーティストの五十嵐靖晃さんからの発案で、育った綿の茎や葉を手で触りながら、今日まで綿と過ごした時間を語り合いました。

アーティストの五十嵐さん

綿を育てることで起きた生活の変化について聞いてみると、様々な声が上がります。

「体調を崩し、一人で家にいた時に綿が話し相手になり、元気をもらった」
「種を蒔く前、周りについた綿をとりすぎてしまい、芽がでるまで心配な日々を過ごした」
「玄関先に置いている綿を見て、郵便屋さんに『大きくなりましたね』と声をかけられた」
「綿も夜になると寝ている。そして、4時ごろに起きることに気付いた」

参加者の感想を受け、五十嵐さんからは「綿の栽培の現場がラマノからそれぞれのお家に移ったことで、参加者の日常へと結び付き、育てる人と綿との関係がより深くなった」とコメントがありました。

続いてラマノ施設長の高野さんによる、オンラインでのラマノの畑を見るツアーを実施。大ぶりのアジサイが咲く坂道を横目に畑へ向かい、参加者の名前が書かれたプレートが添えられた綿を一つひとつ紹介してくれました。

ラマノの綿畑

そして、Tokyo Cotton Villageのトミザワさんに、間引きや害虫の対処方法といった、今の芽の成長に必要な育て方のポイントを教えていただきました。アブラムシへの対処として牛乳を活用する方法もあるそうです。

プログラム終了後には、綿の育て方について個別の相談会を実施。「種を蒔いたが、芽が出ない」という心配な声に対して、具体的なアドバイスとともに「種の使命は発芽することだけではないですよ」とトミザワさん。綿の種は、絞ると油になり、家畜の餌にも活用できます。芽が出ないことは一見悲しいことのように思えますが、種にも様々な役割があると見方が変わる一言で、五十嵐さんからは「TURNの考えに通ずる」との発言が。人と人の違いを起点に表現を生み出すTURNと綿の種に共通点が見えた瞬間でした。

「テレ手のプロジェクト2020 Vol.2 」の様子

次回「テレ手のプロジェクト」は、綿の花が咲き始める8月の開催を予定しています。

今後も、それぞれの場所で綿を育てることを介して、オンライン上で繋がる活動を展開していきます。そして、「種」が「綿」になる秋になったら、収穫した綿を持ち寄ってラマノに集い、ラマノとそれぞれの場所で育った綿を合わせて、一緒に糸つむぎを行います。

今後も定期的にプロジェクトの様子をレポートしていきます。ぜひご覧ください!


【プロジェクト概要】

「テレ手のプロジェクト2020 Vol.1 ―綿花から糸へ..―」
開催日時:2020年5月16日(土)14:00~15:30 [オンライン開催]

「テレ手のプロジェクト2020 Vol.2 ―綿花から糸へ..―」
開催日時:2020年6月28日(日)14:00~15:00 [オンライン開催]

※現在、新規参加者の募集は行っておりません。
今後、参加者を募集する際には、本ウェブサイトやTURN公式facebookページにてお知らせします。

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