ハーモニーは、心の病を持ちながら地域で暮らす30名ほどのメンバーが作業をしたり、趣味の活動をしたり、思い思いに過ごせる場所です。2018年度からは誰でも訪れることができる「お金をとらない喫茶展」を開催し、世田谷の町の中に人々がゆったりと交流する場が生まれています。
今回の「お金をとらない喫茶展3 ~in my brain〜」は、新型コロナウイルス感染症の拡大を防ぐために物理的に対面を避けざるを得ない状況であっても、懐かしい友人たちと再会したい、未だ見ぬ人たちと出会いたいという気持ちを諦めてしまわないよう、オンラインで人々を繋ぐ試みです。「濃厚接触」が難しいのならば、せめて「脳内接触」を、という想いから「in my brain」のタイトルは生まれました。
当日は新型コロナウイルス感染症予防対策を徹底した上で、ハーモニーの様子を中継しながら、各地の人たちと繋ぎ、多彩なプログラムを行いました。
■ 「喫茶展マスター」がナビゲート
最初の登場は「喫茶展マスター」こと、テンギョウ・クラさんです。テンギョウさんは初回の「お金をとらない喫茶展」からハーモニーでコーヒーを淹れ、参加者を迎えてきました。今回はハーモニーとテンギョウさんの滞在先であるココルーム(※)をオンラインで繋ぎ、ハーモニーのメンバーもテンギョウさんのナビゲートでココルームの人たちや参加者たちとの会話を楽しみました。以前のTURN LANDの参加アーティストとして一緒に活動したハーモニーの友人が現在地球の裏側のメキシコに滞在していて、パソコンに姿を見せてくれた時にはメンバーから歓声があがりました。
※ココルーム:大阪の釜ヶ崎にある元日雇い労働者や旅行者などが集うカフェ兼ゲストハウス
■ 「ひらけ~野性!へんてこ感覚でつながる岡山、東京、そして宇宙」
次は、ハーモニーと長年活動をともにしている踊る即興音楽家のナカガワエリさん。コロナ禍のため1年ほどハーモニーのメンバーとは直接会うことはありませんでした。移り住んだ岡山の畑の様子や、山で捕れたイノシシの解体を紹介し、その後、ご近所さんと考案したという「コウモンダンス」では地元の人のアコーディオンに合わせ、各地の人たちと体をほぐしました。
■ 「オンライン幻聴妄想かるた大会」
午後からはハーモニーのメンバーの体験をもとにつくった「幻聴妄想かるた」を使い、オンラインかるた大会を行いました。事前に送られた絵札を手元に用意し「メンバーが画面越しに読み上げる声にあわせて札を取る」というルールに戸惑いながらも、全国から集まった参加者がオンライン上で熱戦を繰り広げました。
■ 「疫病退散!!オンライン祇園祭」
次に、北海道にいるアーティストの深澤孝史さんとオンライン祇園祭を行いました。
祇園祭は古くは伝染病の流行を鎮めるためのお祭りです。それに倣い、北海道白老町にあるお寺の住職の米本智昭さんも参加し、ハーモニーのメンバーと参加者が「疫病(疫神)」を鎮める奉納パフォーマンスを披露しました。
ハーモニーのじゅんさんは「子供の頃から影のようなものに追われている。症状は年々重くなっているが、うまくつき合っていきたい」と話し、疫神を奉納するために影絵を披露しました。
じゅんさんが影絵を操り参加者はガムランを模して食器を叩いて参加。テンギョウさんのいる大阪では本物のガムランが奏でられました。
■ ハーモニーのメンバーが特技を披露
今回はハーモニーのメンバーそれぞれのやりたかったことや特技も披露しました。
似顔絵コーナー
絵の得意なメンバーのじゅんさんがハーモニーにいながら、ココルームにいる人の似顔絵を描きました。参加者からも「そっくり!」という声があがりました。
ソーシャルディスタンスに配慮した音楽パフォーマンス
歌の好きなハーモニーメンバーののんこさんとボイストレーナーとしてハーモニーに関わっている石塚弓子さんのデュエット。弓子さんがスタジオで撮影した映像にあわせてのんこさんが歌い、その音楽ビデオを上映しました。
ハーモニーのメンバー含め結成されたバンド「スマートシューター」は、3人が別々の場所から同時に演奏する音楽パフォーマンスを披露してくれました。
他にも、シマダカズヒロさんがハーモニーメンバー向井さんの思い出の地を訪ねる「妄想散歩」や、写真家の櫻井文也さんによるハーモニーメンバーの写真紹介など、さまざまな企画を展開しました。
最後にハーモニーのメンバーで詩人の益山さんが詩の朗読をしました。生命の誕生を描いた詩に「感動しました」といった感想が寄せられました。
6時間の長丁場でしたが、リアルに出会うことが難しい状況で、さまざまな個性をもったハーモニーのメンバーと参加者が時間を共有した日となりました。
関連記事